G8の債務帳消しにスイスが一役
先進国首脳会議(G8サミット)が7月6日から開催される。この準備会合(6月11日)で、世界最貧国18カ国について債務帳消しが決定された。この決定を受け、スイス政府は歓迎の意を表明している。
この決定によるスイス政府の負担は年3000万フラン(約26億円)にものぼる。開発分野の政府系トップとNGO団体のエコノミストに今回の決定について意見を聞いた。
「債務のくびきから開放されることは、貧困との戦いに対する大きな助けとなります」とスイス開発協力庁(Swiss Agency for Development and Cooperation、SDC)のセルジュ・シャパット氏は語る。
この決定は、7月6日から8日にかけてスコットランドのグレンイーグルスで開催されるG8サミットで公式に承認される。これにより、世界銀行、国際通貨基金(IMF)、アフリカ開発銀行は合計で400億ドル(約4兆4000万円)の債務を帳消しにする。対象国は主にアフリカ地域で18カ国。
債務帳消しが決定した18カ国以外の20カ国についても、民主化や汚職撲滅、緊縮財政などに一定の成果が見られた場合、計150億ドル(約1兆6500万円)の債務削減が行われる。
シャパット氏は、「今回の債務帳消しに向けて、スイスは活発に政府間交渉を行いました」と話す。「債務の負担をなくしたり、軽くすることは、貧困をなくすためにお金を使うことと同じことだ、と説いて回ったのです」
債務削減の後に来るもの
世界銀行やIMFが債務を帳消しにするということは、貸したお金が返ってこないわけで、両機関のメンバー国がその負担を強いられるということになる。スイスについていえば、今後10数年にわたり、年間2500万から3000万フラン(21億円から26億円)の負担となる。
このため、連邦議会は2006年から2008年の国家予算について48億フラン(約4100億円)の削減を承認した。この予算は本来ならば途上国から返済された資金が当てられたはずだった。この穴埋めは開発援助予算項目から拠出される。
「最終的な決定は閣議に委ねられますが、私たちはほかの予算からもお金が出て、開発援助予算がそんなに減らないよう、祈っています」とシャパット氏は少々心配する。
スイス開発機構連合(開発援助に携わる6機関が政治家へのロビー活動のために合同で設立したNGO)のシニア・エコノミスト、ブルノ・グルトナー氏もシャパット氏に同感だ。
しかしグルトナー氏は、結果はどうであれ、今回のG8の決定は喜ばしいことだったと語る。「これは正しい方向へ踏み出す初めの一歩です。しかし、まだ債務削減が必要な国は40から50もあるのです」と、グルトナー氏は付け加えた。
分かれる国際金融機関への評価
一方、グルトナー氏は、世界銀行とIMFが債務を軽減する方法として行ってきた構造調整プログラムについて強く非難した。
構造調整プログラムとは、融資の金利や期間を変更して返済を軽減する代わりに途上国の経済改革を進めることを目的としたプログラムで、世界銀行とIMFが1980年代に開始したものだ。「世界銀行・IMFが構造調整プログラムにつけてくる条件は、NGOのロビー活動などによって今ではかなり和らいだものになったものの、それでも厳しすぎます」
しかし、前出のスイス開発協力庁、セルジュ・シャパット氏はまた別の意見だ。「この問題は2001年に行われた世界貿易機構(WTO)の閣僚会議でも議論の中心になりました。しかし、融資の条件は、国際機関が援助対象国の状況に合わせてプログラムを実施しているので、彼らに任せるべきだと思います」
swissinfo フレデリック・ビュルナン、 遊佐弘美(ゆさひろみ)意訳
キーワード
G8は米国、カナダ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、日本、ロシアで構成される。
スイスは世界で債務削減が提唱され始めた1990年代、最初に削減に踏み切った国の1つである。

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