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地球を温暖化から救う?大気中からCO₂を回収する新技術に脚光

大気中の二酸化炭素(CO2)を除去する世界初の産業用プラント。スイス企業クライムワークスが開発し、2017年にチューリヒから数キロ離れたヒンヴィールで稼働を開始した © Keystone / Gaetan Bally

気候変動に関する国連の最新報告書では、大気中の二酸化炭素(CO2)を除去する技術にも注目している。スイスはこの分野で先駆的な役割を担うが、具体的には何ができるのか?

このコンテンツは 2022/04/09 09:00

2050年までに世界中でカーボンニュートラルを達成するには、温室効果ガスの排出量を削減し、化石燃料を再生可能エネルギーに置き換えるだけでは足りない。それに加え、何十億トンもの二酸化炭素(CO2)を大気中から除去する必要がある。

今月4日に発表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新報告書は、排出量を制限し、減らすための選択肢に焦点を置いた報告書だ。大気中のCO2を回収し長期的に除去する新技術は、その中でも最も革新的とされる一方で、最も賛否の分かれる解決策だ。

IPCCと気候変動に関する報告書

ジュネーブが本部の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、現在195カ国が加盟する政府間組織。気候変動の異なる側面を扱う3つの作業部会が置かれ、それぞれの任務を遂行する。作業部会1(WG1)は自然科学的根拠について、WG2は自然システムへの影響と適応策について、WG3は緩和(温室効果ガスの削減)についての評価を行う。

4月4日発表の「第3作業部会報告書」は、6次評価報告書の3部目に当たり、WG3が担当した。第1作業部会報告書は既に昨年8月、第2作業部会報告書は今年2月に刊行された。

国内、並びに国際的な気候政策はこれらの報告書がベースとなるため、政治的な影響力は大きい。

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ネガティブエミッション技術とは?

大気中のCO2を回収・吸収し、永久的に除去する技術やプロセスを「ネガティブエミッション技術(NETs)」と呼ぶ。CO2は大気中に留まる時間が長びけば、それだけ地球温暖化に与える影響も大きくなるため、除去がとりわけ重要だ。大気中にガスを放つ「エミッション」に対し、大気中からガスを除去するため「ネガティブエミッション技術」と呼ばれる。

大気中からCO2を取り除く方法は?

基本的に2つのアプローチがある。1つは樹木や植物が光合成でCO2を吸収・蓄積する力を利用する生物学的な方法だ。植林や、土壌に炭素を固定する農法がこれに当たる。

もう1つは、大気中のCO2を直接捕集し(DAC:Direct Air Capture)、永久保存、または他の用途に利用する技術的な解決策だ。

次の動画では、DAC法で世界有数のメーカー、スイスのクライムワークスが開発したCO2抽出装置の仕組みを紹介する。

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CO2は工場や石炭火力発電所、焼却炉といった発生源で直接回収・貯留する(CCS:Carbon Capture and Storage)こともできるが、これはCO2を大気から除去するのではなく、単にガスの放出を防ぐだけなので、正しくは「ネガティブエミッション」ではない。

スイスのCO2地中貯留計画 北海が候補に

排出量より多く回収するには、CCS方式とバイオマスの燃焼で発生するCO2を回収・貯留する技術(BECCS:Bioenergy with Carbon Capture and Storage)を組み合わせる必要がある。つまり、樹木や植物を植林して大気中のCO2を除去し、更に最終的に発電所で焼却時に放出されるCO2を回収・貯蔵するという技術だ。

回収したCO2はどこへ?

1つには、CO2を「リサイクル」して食品・飲料業界や農業、エネルギー産業、あるいは合成燃料の製造などで再利用する方法がある。連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)は、太陽エネルギーとCO2を使って持続可能な燃料を生産する製油所のプロトタイプを立ち上げた。ETHZのスピンオフ「シンヘリオン(Synhelion)」は、CO2からソーラー燃料を製造する技術を商業化。つい最近、スイス・インターナショナル・エアラインズ(SWISS)と持続可能な燃料の供給契約を締結した。

だが今後30年以内にカーボンニュートラルを達成するためには、CO2を恒久的に貯蔵する必要がある。例えば枯渇したガス田や油田、塩水に満たされた帯水層などで地下貯蔵するのが最も有望な解決策の1つだ。

現在、回収・除去されているCO2の量は?

産業界で発生するCO2を回収するプラント(CCS法)は、既に1970年代から存在する。現在27カ所が稼動中で、その半数は米国にある。国際エネルギー機関(IEA)他のサイトへによると、年間4千万トン以上のCO2を回収し、これは全世界の排出量の約0.1%に当たる。

大気中のCO2を直接捕集するDAC法を採用する施設は現在、世界中に19カ所あり、合計で年間1万トンのCO2を除去できる。昨年スイス企業「クライムワークス(Climeworks)」とアイスランドの「カーブフィクス(CarbFix)」がレイキャビク近郊に建設したプラントがこれまでで世界最大。年間最大4千トンのCO2をろ過し、これは欧州で600人が平均的に排出するCO2に相当する。

CO2の回収・除去は、どれだけ貢献できるのか?

連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)のフィリップ・タールマン氏とサシャ・ニック氏は、これらの技術を使えば、現在の排出量の5~10%を除去できると考える。万能薬ではないが、今世紀半ばまでに気候中立を達成するためには十分有効だと最近の論文で述べている。

なぜ評価が二分しているのか?

環境保護団体他のサイトへや科学界の中には、この技術では気候問題を解決できないという意見もある。コストがかかるうえ、高エネルギー消費、環境への負荷、複雑なプロセス、更には回収したCO2の貯蔵場所までの輸送などがその理由として挙げられる。

最も強く批判されるのは、これらの技術が石炭や石油の使用を続ける言い訳になり、化石燃料への依存を長引かせるかもしれない点だ。最も必要性が高く、最も安価、あるいは最もシンプルな対策は、CO2の排出自体を止めることだ。

(独語からの翻訳・シュミット一恵)

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