Navigation

海のプラスチックごみ、巨大ヨットできれいに

SeaCleaners

海に漂うプラスチックごみを巨大ヨットで集積―。ソーラーエネルギーで動く巨大ヨット「マンタ」が今月、スイス・ジュネーブで開かれたジュネーブ国際発明展他のサイトへで初公開された。発案したのは著名なスイス人航海士イヴァン・ブルゴーニュさん(46)だ。

このコンテンツは 2018/04/25

毎年、世界の海には約900万トンに上るプラスチックごみが捨てられている。北太平洋だけでも約160万平方キロメートル超の大規模なごみのたまり場が出来ており、「第7の大陸」というあだ名が付いたほどだ。

第46回ジュネーブ国際発明展

4月11~15日に開催。40カ国から800の個人・団体による出品者が、1千件超の発明品を展示した。ブルゴーニュさんの海洋清掃ヨットは非コンペティション部門でお披露目された。

End of insertion

ヨットは約600立方メートルのごみを集めることが出来る。ブルゴーニュさんは海のプラスチックごみは環境、経済、健康に直結する深刻な問題であり、世界の海洋を保護するために喫緊に対策を講じる必要があると話す。

ヨットはソーラーエネルギーで動き、水に浮くごみ集積・加工場の役割も果たす。大量のプラスチックごみを海上で分類、圧縮し、岸に付いてからリサイクルに出す仕組みだ。

2022年に始動

ブルゴーニュさんはフランス語圏のスイス公共放送(RTS)に対し「私が若かった頃は、家族と船に乗って世界中を回った。その頃は海にプラスチックごみなんて見なかった」と振り返り、「あれから30年経ち、インド洋はプラスチックごみだらけになってしまった。30年前に注意喚起がなされるべきだった」と話す。

ブルゴーニュさんのヨット「マンタ」の初航海は2020年を予定。ブルゴーニュさんは「さらに同様のヨットを100隻以上増やして、海のごみ問題を片付けていければ」と話す。

ヨット1隻当たりの製造費は3000万ユーロ(約40億円)。マンタは個人やスポンサーの寄付などで完成した。ブルゴーニュさんは、国や地方自治体、住民の寄付も必要だと話す。

フランス語圏スイス出身のブルゴーニュさん Keystone

水面のごみをキャッチするバリア

こうした取り組みに乗り出したのは、ブルゴーニュさんだけではない。会場では、環境団体オーシャン・クリーンアップ財団が開発した、海流を利用して水面に浮かぶポリ袋やペットボトル、つり用の網などを回収する「浮遊型バリア」が大きな注目を集めた。

開発したのはオランダ人のボイヤン・スラットさんだ。スラットさんが開発したシステムは世界中で大きな話題を読んだ。スラットさんは、北海での実証実験に加え、問題となっている北太平洋のプラスチックごみのたまり場も視野に入れる。

清掃用の機械もある。英国で開発された海の掃除機ロボット「Sea-Vax」は太陽光が動力源。航海ドローン「プロテウス」は、水面の油膜の影響を受けずにごみを見つけ、回収することができる。

2016年に世界中の海洋調査を行ったスイスの環境保全団体「レース・フォー・ウォーター財団」は、大規模な清掃活動は現実的ではないと指摘する。ごみの大部分は海面ではなく水中深くに沈んでいて、回収が困難な上に費用もかかるからだという。

オーシャン・クリーンアップ財団の調査では、北太平洋に集まるごみは約8万トンに上る Keystone

さらに、マイクロプラスチックと呼ばれる微小なプラスチックごみに対しては、対策が皆無だという。マイクロプラスチックは、通常のプラスチックごみが砕けて出来る大きさ5ミリ以下の粒子で、それを胃の中に取り込んだ魚が食物連鎖の中で、動物や人体への健康被害を拡大させる問題が指摘されている。

急激に拡大するプラスチックごみのたまり場をどうやってきれいにするか。環境保護活動家は持続可能な解決法しかないと指摘する。それには人間の生活様式や消費スタイルを変え、使い捨て製品を避けることが必要だという。

(英語からの翻訳・宇田薫)

このストーリーで紹介した記事

JTI基準に準拠

JTI基準に準拠

おすすめの記事: SWI swissinfo.ch ジャーナリズム・トラスト・イニシアチブの認証授受

現在この記事にコメントを残すことはできませんが、swissinfo.ch記者との議論の場はこちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

共有する

パスワードを変更する

プロフィールを削除してもいいですか?