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マフィアに優しい国、スイス

イタリア警察が公開した動画の一場面 swissinfo.ch

反マフィア法もなければ多方面で活動する犯罪組織に関する十分な知識もない。スイスでイタリアの犯罪者一味は捜査官の目をかいくぐって活動している。

このコンテンツは 2021/12/07 06:00
Philipp Zahn, SRF, Madeleine Rossi

今年11月にイタリア政府は再び大規模作戦に打って出た。標的はカラブリアのマフィア組織ンドランゲタとその国際的なマフィアネットワークだ。マフィアに所属している、または関係していると疑われる104人がイタリアで逮捕された。スイスでもグラウビュンデン州、チューリッヒ州、ザンクトガレン州、そしてティチーノ州で逮捕者が出た。

この事件に関し公開された調書に、スイスでマフィアは活動しやすいという供述が見られた。「スイスではイタリアよりずっとやりやすい」とあるマフィアのメンバーは事情聴取で話している。

「スイスではうまくいってたよ。イタリアではめちゃくちゃにされたけど」

「冗談だろ?」

「本当だよ。スイスには『416の2』 がないからね」

「416の2」とはイタリアの反マフィア法第416条の2のことだ。犯罪組織の構成員であるだけで、最長26年の禁固刑に処すと定めている。

スイスは麻薬や武器の取引、恐喝、マネーロンダリング(資金洗浄)犯罪者の隠れ家や活動拠点として機能していることが捜査で明らかになった。伊コモ地区の財務警察サムエル・ボリス氏は次のように説明する。「逮捕者はスイスを麻薬、武器の物流拠点として使っている。麻薬はスイス向けにイタリアから輸入されていた。一方、武器はイタリア向けに第三国から輸入されていた」

スイスでの犯罪活動

「イタリア当局が告発している犯罪行為は、イタリアを基盤としているが、少なくとも部分的にはスイスでも行われたと見られる。逮捕に先立ち州および連邦刑事警察、また検察庁が捜査に当たった」と連邦司法警察省司法局(BJ/OFJ) は説明する。

スイスにとって難しいのは国内で活動するイタリアマフィアの組織、特に「ンドランゲタ」の組織構成だ。ンドランゲタは長年にわたってスイス全土で多方面にわたり経済活動の足場を固めている。その範囲はレストラン、ホテル、建築業のみならず、ペーパーカンパニーを通して金融コンサルタントにも及んでいる。ペーパーカンパニーは特にグラウビュンデン州で広まっている。

カモッラ、サクラ・コローナ・ウニータ、コーザ・ノストラなど他のイタリアマフィアもスイスに存在するが、カラブリアを拠点とするンドランゲタの巨大な勢力に比べれば規模は小さい。

反マフィア法がないスイス

マリア・ロゼーリ氏はイタリア語圏のスイス公共放送(RSI)のジャーナリストとして長年スイスの組織犯罪を取材してきた。今回の事件はマフィアがスイスでいかに悠々と活動しているかを改めて見せつけたと彼女は語る。「スイスのマフィアの生活がいかに楽かをマフィアが2人で笑って話しているなんて信じられない」

イタリアと違ってスイスには「反マフィア法」がなかったからだ。反マフィア法のおかげでイタリアではマフィアの末端の組織員であっても広範囲な取り調べができる。

マフィアにとってスイスが住みやすいのは、スイス刑法260条の3でマフィアに加担した犯罪者には最近まで最長5年の禁固刑しか定められていなかったためだ。イタリアでは終身刑に処されるリスクがあるのに比べてあまりに短かった。今年7月、法改正で厳罰化した。

しかし、イタリアの発表によると、今回はスイスの刑法にも触れる物品を押収した。コカインだ。ロゼーリ氏はそこにチャンスを見出す。これで紛れもない犯罪となるからだ。「今回キロ単位のコカインが押収されたことで、警察が裁判に持ち込める可能性が出てきた。つまり、イタリアに送還するだけではなく、ここスイスで捜査ができるかもしれない」

(独語からの翻訳・谷川絵理花)


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