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野菜と木で作られたエコ燃料、実用化なるか

前ミスター・スイスもE85の宣伝に一役買っている Keystone

石油を原料とする従来のガソリンより二酸化炭素の排出が80%も少ないエコ燃料、E85 。この環境に優しい燃料が、スイスのガソリンスタンドで売り出され始めた。

このコンテンツは 2006/08/11 15:25

しかし目の前には問題が山積しているようだ。経済的にどれだけ実用性があるのか、生産する過程も環境に優しいのかどうかなど、不透明な要素が多いのだ。

この画期的な試みに挑戦したのは1956年設立の中小企業、アグロラ社だ。同社のチューリヒ州とヴィンタートゥール州にあるガソリンスタンドにこの7月、E85がお目見えした。1年かけて、全国で約10カ所のガソリンスタンドにE85 の販売を広げる予定だ。

地球温暖化対策

E85の育ての親は、国営スイス・アルコール委員会だ。同委員会で商業部門を担当している「アルコ・スイス」が、地球温暖化対策として開発した。

E85は、野菜や木片を発酵させたエチル・アルコール ( 85% ) と従来のガソリン ( 15% ) を混ぜて作られている。1リットル1.39フラン ( 約130円 ) で、無鉛ガソリンより20%お得だ。

しかし、環境団体の「グリーンピース・スイス」はE85 が地球温暖化を大幅に改善するという見方に懐疑的だ。「まあ、方向としては間違っていないとは思いますが、まだ多くの問題が残されています」と語るのはグリーンピースの広報担当、シビル・ツォーリンガーさんだ。

「E85は、生産するにしても、全国のガソリンスタンドに運搬するにしても、非常に多くの燃料を費やします。環境に優しい燃料が一般に受け入れられるためには、それを生産する過程も環境に優しくなければいけません。今の程度の少ない量ならスイス国内でも可能ですが、かなりの量になってくるとスイスが自力で行うのは無理です。そうすると輸入に頼ることになります。するとまたより多くの燃料が浪費されるというわけです」

「まずは現在の生活の中で、省エネやエコ自動車生産などの可能性を徹底的に探ってみるべきです」

スウェーデンの自動車製造大手サーブは、この秋にE85を使える新しい車種を発売する予定だ。ターゲットはもちろんスイス市場。米国大手フォードもこの動きに追随する。しかし、実際のところ、来年中頃までにスイスの道路を走るこの手の新型車は40台ほどだろうと見積もられている。

政府の支援が不可欠

需要の見通しが不透明なまま、プロジェクトに多大な資金を投資することについて、アグロラ社の担当ディレクター、シュテファン・フェール氏がスイスインフォの取材に答えた。「確かに全くの経済的観点だけからヴィンタートゥールのガソリンスタンドを見れば、今、このようなリスクを取るべきではないのかもしれません」

「けれども将来的に、スイスの消費者は環境に優しい燃料を広く受け入れるようになると我々は見ているのです」

また、フェール氏によると、エチル・アルコール燃料を生産するコストは、石油に比べて予想が難しい。「環境に優しい商品はどうしても生産コストが高くなってしまいます。今でも利益はそんなに多くありませんし、これからもっと厳しくなることもありえます」

このため、連邦議会は近いうちに環境に優しい燃料に対して、税金を軽減または撤廃することを審議する予定だ。

アルコ・スイスのディレクター、ピエール・シャーラー氏は「このような減税対策は、E85の強力な援軍となるでしょう」と政府の後押しを歓迎する。現在、E85は年間5000万リットル生産することが可能であるにもかかわらず、800万リットルしか生産されていない。

「5000万リットルまで生産を引き上げるためには、政府の支援が不可欠です。いずれにせよ、E85はスイスの未来に大きな役割を担っていると信じています」

swissinfo、マシュー・アレン ( ヴィンタートゥールにて ) 遊佐弘美 ( ゆさ ひろみ ) 意訳

キーワード

サーブ社によると、通常の乗用車の走行距離は年間平均1万5000キロメートル、必要なガソリンは1350リットル。
エコ自動車に乗れば、必要な燃料は従来のガソリン(263リットル)を含むE85(1755リットル)。

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補足情報

‐スイスの自動車 ( トラックやバス等を含む ) が消費する燃料は、ガソリンが65%、軽油が34%、その他が1%。
‐E85 のように有機物で作ったエコ燃料はEUの燃料消費のうち、0.3%に過ぎない ( 2003年の統計 )。EUはこれを2010年末までに5.75%に引き上げたい意向だ。
‐フランスはEUの水準よりさらに高い目標を立てており、2010年には7%、2015年には10%までエコ燃料の使用比率をあげることを目指している。

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