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武装中立

Keystone/Gaetan Bally

スイスは1815年から中立国だが、「中立」であることは非武装を意味するものではない。スイスには自衛と国内安全保障のために軍隊が存在する。

このコンテンツは 2022/06/27 11:00

中立はスイスのアイデンティティーの一部だ。1815年、欧州列強はウィーン会議でスイスの中立を承認した。1848年にスイス連邦憲法を制定した者たちにとって、中立は独立性を維持するための手段だった。

1907年、ハーグ条約によって初めて中立国の権利と義務が規定された。領土の不可侵と引き換えに、中立国は戦争に関与せず、戦争当事国の公平な扱いを保証し、武器や兵力を提供しないことが義務付けられた。

中立国は自ら国を防衛する義務がある。そのためスイスは常に適切なレベルの軍隊を維持するよう努力してきた。

スイス軍は「民兵」であり、職業軍人は少ない。成人男性は連邦憲法で兵役が義務付けられているが、女性は志願兵制だ。

軍の訓練学校で基礎的な訓練を受けた後、兵士は毎年、軍の施設で数週間の再訓練を受ける。軍服を着た若い兵士が銃器を持って歩く姿は、スイスの街角や電車などでよく見られる。軍から支給された銃火器は自宅に持ち帰って保管できるが、軍隊の武器を使用した殺人や自殺が多いことから、この伝統はしばしば議論を呼んでいる。

心理的理由で兵役を拒否する男性は、兵役代替役務として社会奉仕勤務を選択できる。その場合、活動に従事する期間は兵役期間の1.5倍になる。

中立国だからといってスイスが国際機関に参加できないわけではない。軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)には加盟できないが、「平和のためのパートナーシップ」で協力している。

1920年、スイスは国際連合(UN)の前身である国際連盟に加盟し、ジュネーブへの本部設置に成功した。第一次世界大戦後、スイスは外交と人道の専門性を活かし、国際的任務で大きな役割を果たすべく努力した。

だが第二次世界大戦と冷戦により、スイスが完全な中立性を保つにはいかなる国際同盟にも参加すべきでないとの考えが強まった。そのため、スイスが国連に加盟したのは設立から50年以上が経った2002年のことだった。

それ以降スイスは国際機関への参加を拡大し、ユネスコ、経済協力開発機構(OECD)、欧州評議会、欧州安全保障協力機構(OSCE)などに加盟している。またジュネーブには、多くの国際機関が本部を構える。

平和と人権の促進は、常にスイスの外交政策の優先事項の1つになってきた。国際機関が主導する民間及び軍事平和維持活動に参加し、和平プロセスへの同行や選挙監視のため多くの国に専門家を派遣している。スイスはまた、紛争当事者が解決策を見出せるよう仲介・調停役も担う。

スイスの中立性については当初から多くの議論がなされ、疑問の声も上がっていた。第二次世界大戦中スイスは、交戦国に軍需品や物資を納入するなどして幾度となく中立の原則を破った。ユダヤ人避難者の受け入れを拒否したことや、ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)犠牲者のお金を1990年代末まで国内銀行に保管していたことでも厳しく非難された。

スイスが武器を製造し多くの国に輸出していることも、中立性や平和促進の努力に反すると考える人は多い。

国際機関への協力や加盟が新たに提案されるたびに、スイスの中立性の定義と役割について新たな議論が交わされる。だが、各国が相互に依存し合うグローバル化した今日の世界では、中立の原則の重要性が薄れ、その定義はより困難になったと思われる。

それでもスイス国民は依然として、国の中立性に非常に愛着を持っている。2019年に行われた世論調査では、回答者の95%以上が中立を維持したいと望み、中立はスイスのアイデンティティーの1つだと考えていることが明らかになった。

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