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ローザンヌで羽を広げるバレエダンサー

大きく様変わりしたローザンヌ国際バレエコンクール

©PDL/Gregory Batardon

ローザンヌ国際バレエコンクールは今年で50回目を迎える。現在では世界に名をはせる国際色豊かな若手ダンサーのコンクールの実態は、創設時当初とはかなり異なり、めまぐるしい変化があった。第1回目のコンクールから取材をしている地元ジャーナリストに、今昔の違いやその背景を聞いた。

このコンテンツは 2022/01/31 15:40

31日、スイス西部ヴォー州で第50回ローザンヌ国際バレエコンクールが始まった。今回のコンクールには、39カ国の376人が応募した。新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の影響で、予備審査を通過しても出場を辞退した人がいるものの、16カ国から70人の若手ダンサーがローザンヌに集まっている。西洋舞踏のコンクールとはいえ、出場者の半数が日本、韓国、中国といったアジア出身。アルゼンチンやブラジルといった南米予選の通過者もいて、国際性に富んでいる。

しかし、「当初のコンクールは野心的だったが、かなりローカルなものだった」と第1回のコンクールから取材を重ねる地元のジャーナリスト、ジャン・ピエール・パストリ氏は話す。創設者で舞踊振興財団の理事だったフィリップ・ブランシュバイグ氏他のサイトへは、ローザンヌ国際バレエコンクールが地域的なものではなく、いち早く国際的なコンクールに展開するように望んでいたが、1973年1 月19~21日に開催された初回のコンクールに参加したのは欧米8カ国の学生50人だけだった。パストリ氏によると、初のコンクールでは、地元ローザンヌの教師3人が審査員を務め、15~19歳が予備審査なく参加できた。参加者の多くが開催国のスイス出身者だったという。

また、一般の観客に公開されたのは決勝のみで、現在のようにバレエファンがコンクールを観ることはできなかった。1999年にコンテンポラリーが導入され、2006年にフリーが廃止。また同年にビデオの予備審査が設けられたことにより、参加者のレベルが大きく向上した。

ローザンヌのバレエコンクールは、ヴァルナやモスクワのようにプロを対象にしたものではなく、卒前研修生のためのもの。第1回目のコンクールでは入賞者の受け入れ先が、仏カンヌ・ロゼラ・ハイタワー・バレエ学校、英ロイヤル・バレエ学校、モーリス・ベジャールのムドラ・バレエ学校3校のみだった。現在では提携校は30校以上に増え、1999年からはカンパニーの研修生となる道も開かれている。こうして、ローザンヌ国際バレエコンクールは、国の助成や資格制度がなく、自国でプロになる道がない若手ダンサーを魅了し、世界各地からの応募者が増加した。

▼ 動画:1973年の第1回ローザンヌ国際バレエコンクールを振り返って

パストリ氏と当時のアーカイブ映像)

発展の要因

アレッサンドラ・フェリ、カルロス・アコスタ、ディアナ・パストリ、フリーデマン・フォーゲル、セルゲイ・ポルーニン…数々のスターダンサーを輩出したローザンヌ。パストリ氏は、ローザンヌ国際バレエコンクールが発展した理由の1つに、キャリアの短いバレエダンサーという職業の世代交代の速さを挙げる。この50年で2、3世代が交代し、コンクールに参加したダンサーがプロや教師となり、コーチや審査員としてローザンヌのコンクールに戻ってくることで、コンクールのプロフェッショナル化と共に、コンクールのレベルと質が向上した。そして、こうしたサイクルはコンクールの国際的な知名度のアップにも結び付いた。

日本では1978年、吉田尚美さんが第6回のコンクールで優勝を果たしたのを機に、ローザンヌが日本メディアにも注目されるようになった。また、ローザンヌ国際バレエコンクールが東京で開催された(89年)ことや日本人が審査員となったこと、日本放送協会(NHK)でファイナルが放送されるようになったことで、日本からの応募・参加者が増え、これまでに83人の日本人ダンサーが入賞した。

ローザンヌ国際バレエコンクールは、単にスターを生み出すためのものではない。プロになるためにさらにトレーニングを必要とする才能ある若いダンサーに、奨学金でその機会を与えるものだ。歴史を振り返ると、世界的な大スターもいれば、必ずしも世界中に知られていなくても、高キャリアを積んでいるダンサーも大勢いる。パストリ氏は、ローザンヌに出場すれば成功につながるというよりも「乗馬の鐙(あぶみ)」、本番前の試金石にすぎないと語る。

ローザンヌ国際バレエコンクール

正式名称はPrix de Lausanne(プリ・ド・ローザンヌ)で、才能豊かな若いバレエダンサーがプロの道に踏み出すことへのサポートを目的とし、スイス西部のヴォー州ローザンヌで1973年から開催されている。15~18歳の若いダンサーを対象にした世界最高の国際コンクールの1つで、若手ダンサーの登竜門とも言われる。現在カンパニーとプロとして契約中、または過去にプロ契約を結んだことのあるダンサーは参加できない。入賞者は、奨学金を受け取り希望するバレエ学校かバレエ団で1年間研修できる。

本選の第50回ローザンヌ国際バレエコンクールは、モントルー・ミュージック&コンベンションセンター「2m2c」で2022年1月31日~2月6日に開催される。参加者はコンクール中5日間コーチの指導を受け、2月4日にファイナリスト20人を選抜する。受賞者は2月5日に発表される。

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シリーズ「ローザンヌから広がったバレエ半世紀」

1973年からスイス西部ローザンヌで開催されている若手ダンサーのための登竜門と言われるバレエコンクール「プリ・ド・ローザンヌ」。どのようにローザンヌのコンクールは変遷したのだろうか。審査員、振付家、出場者へのインタビューやアーカイブ映像から、過去50年間の移り変わりを追う。

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※この記事は、シリーズのパート1。パート2では、日本人初の受賞者、吉田尚美さんが1978年第6回目のコンクールについて語る。パート2はこちら他のサイトへ

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