Navigation

国際都市ジュネーブ

変貌する国際都市ジュネーブ

国際機関が集まり、多国間主義の重要なハブである国際都市ジュネーブ。だが多国間主義は大きな圧力に直面し、新型コロナウイルス感染症のパンデミックで会議の大半がオンラインで行われるようになった。そしてパンデミックの出口が見えるや否や、ロシアによるウクライナ侵攻という新たな危機に見舞われている。

このコンテンツは 2022/07/22 10:00
Skizzomat(イラスト)

コロナ下では、国際機関の中でも特に注目を浴びたのが世界保健機関(WHO)と世界貿易機関(WTO)だった。ウクライナ戦争では人権や人道問題に焦点が当たっている。ジュネーブにはこれらに取り組む国際機関が数多くあり、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)もその1つだ。元チリ大統領のミチェル・バチェレ氏が2018年9月から人権高等弁務官を務めていたが、22年8月末で退任する。同氏は対中姿勢が強い批判を浴び、同ポストの責任の重さを浮き彫りにした。

国連人権理事会(HRC)も国際都市ジュネーブの中心的存在だ。「パレ・デ・ナシオン」と呼ばれる国連欧州本部に本拠を置く。4月7日に開かれた国連総会では、ウクライナを侵攻したロシアのHRC参加資格を停止した。独裁者ムアンマル・カダフィ政権による人権侵害で2011年に資格を停止されたリビアに続く2例目だ。

3月にはロシアの侵攻を批判する決議を採択し、ウクライナで人権侵害や国際人権法違反が行われているかを調べる調査委員会の立ち上げを決めた。

​​こちらの動画は、HRCの仕事ぶりを詳しく解説している。​​​​​​

食糧危機

ウクライナの難民や人道危機に対しては、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や世界食糧計画(WFP)といったジュネーブにある他の国連機関も救援活動に尽力している。戦争により世界の一部で食糧危機が深刻化。特にアフリカや中東では供給網が断たれ、価格の上昇や援助の資金不足が生じている。

新型コロナウイルスとWHO

世界の耳目がウクライナに集まるものの、コロナ感染者数は再び増加に転じている。2021年12月に開かれたWHOの特別会合で、加盟国は次なるパンデミックに対応するための新たな条約作りに向け、議論を行うことで合意した。市民団体は条約作りへの参加を求めており、策定には数年を要しそうだ。

ジュネーブに本部があるWHOは1948年に設立。全ての人が必要な時に基礎的な保健医療サービスを受けられる環境づくりを促進するほか、国際基準を定め、公衆衛生上の緊急事態に対する国際的対応を調整することが同機関の役割だ。

WTOとワクチン

ジュネーブに本部があるWTOもまた、組織改革を求める声に直面している。同組織で昨年、最も賛否の分かれた議論の1つが、ワクチンの不平等分配を巡る内容だった。今年6月にジュネーブで開かれる閣僚会合では、危機の際にワクチンの特許権を保留すべきかどうかを巡る議論が決着を見た。だが先進・途上国双方にとって納得のいかない内容になった。

WTOは164カ国が加盟。長い交渉の歴史を持つ。

「肥沃なエコシステム」

ジュネーブには国連欧州本部、40以上の国際機関に加え、700超の政府機関や学術機関、178カ国・地域の外交使節団が集まる。

国連では最近、国際司法調査官と専門家によるチームがシリア、ミャンマー、スリランカで発生した深刻な国際犯罪に対し、証拠収集と保存、そして刑事訴追の可能性を模索している。

国連組織や各国政府代表に加え、多くの国際NGOや学術機関が集まる国際都市ジュネーブ。それがこの都市に国際的な研究と政策決定の「肥沃なエコシステム」をもたらす。一部のNGOや国連でさえ、パンデミックの連鎖反応に脅かされているのかもしれないが、スイス連邦政府はスイス・デジタルイニシアチブやジュネーブ・サイエンス・ディプロマシー・アンティシペーター財団(GESDA)などの革新的・未来的なジュネーブの「プラットフォーム」を支援している。GESDAは進歩的な新興企業が集まる「バイオテック・キャンパス」内にある。

GESDAは2019年に設立。スイス政府、ジュネーブ州、ジュネーブ市が資金提供する。2021年10月に初のサミットを開き、これまでの取り組み内容を初めて公開した。スイス政府は22年3月、今後10年分の出資を決めた。

平和、人権、国際正義は依然、重要な焦点だ。国連内の政府間組織である人権理事会と、多数のNGOや研究者に支えられた人権高等弁務官事務所が、ジュネーブから世界中の人権を促進し、保護している。

パンデミック時代のデジタル外交

国連欧州本部があるパレ・デ・ナシオンの廊下と会議室は、以前は各国の代表や報道機関でにぎわっていた。しかし、コロナに伴う1回目の部分的ロックダウン(都市封鎖)が敷かれた2020年春は、ほぼがらんどうの「主(ナシオン)のいない宮殿(パレ)」に変わってしまった。「ニューノーマル(新常態)」に戻った今も、多くの活動が一部オンラインで行われている。パンデミック終息後も、ジュネーブの国際機関の働き方は変わっていくかもしれない。

資金確保はジュネーブの国際機関にとって大きな悩みの種だ。国連システムの限界が試されたパンデミックで、財政問題は深刻化した。国連機関、国際機関、NGOはコロナによる制限措置の中で資金確保に苦慮した。

長期的な傾向としては、大規模な国際機関が特定のリソースを高物価のジュネーブから別の安価な場所に移すかもしれない。だが、ジュネーブにはそれを上回るプル要因(引き付ける要素)があるという。1つは資金を提供するドナー、政策決定者、専門家が既に揃っているということ。ジュネーブ州のウェルカムセンター(CAGI)の責任者ジュリアン・ボーヴァレ氏は「国連と国際システムが市民社会に開かれている限り、ここジュネーブにはプル要因がある」と話す。

(英語からの翻訳・宇田薫)

JTI基準に準拠

JTI基準に準拠

おすすめの記事: SWI swissinfo.ch ジャーナリズム・トラスト・イニシアチブの認証授受

共有する

パスワードを変更する

プロフィールを削除してもいいですか?