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世界がスイスの職業訓練制度にもっと注目すべき理由

職業訓練修了者は大手銀行や国のトップにまで出世している。スイスの職業訓練制度は世界的にも職業訓練の「黄金基準」として高く評価されることが多く、義務教育修了後の進路として最も人気がある。

このコンテンツは 2022/10/15 09:00
Philip Schaufelberger (illustration)

職業訓練を修了した著名人として、スイスの銀行最大手UBSの元最高経営責任者(CEO)、セルジオ・エルモッティ氏や現職閣僚2人が挙げられる。ギー・パルムラン経済相は農業の職業訓練を受け、ウエリ・マウラー財務相は農業協同組合の事務職員としてキャリアをスタートさせた。

マウラー氏は「若いときに働きに出てよかった。この時期に身につけた技術や対応力はキャリアを通して役立ったし、今でも日常的に役立っていると思う」とスイス・ハウスのインタビューで話している他のサイトへ

スイスのデュアルシステム(二元制度)では企業で実習生としての給与を受け取りながら実務を学ぶ一方で、週1、2日は学校の授業で理論を学ぶ。スイスでは義務教育修了者の約3分の2が職業訓練を選択する。

また、ケータリング業からハイテク業界まで230もの幅広い職種から選ぶことができる。

職業教育訓練(VET)によって質の高い労働力が確保でき、若年層の失業率も比較的低く(2021年平均は2.5%他のサイトへ)抑えられるため、スイスが経済的に成功した要因の1つだと考えられている。

コロナによる影響

新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的流行)が始まった頃、実習の受け入れ先を見つけるのが難しくなるのではないかと懸念された。企業は経費を削減していた上に、2020年春にはロックダウン(都市封鎖)のため、生徒が実習の受け入れ先を見つけるのに欠かせない、面接を受け職場を訪れることさえ困難になった。

しかしこの懸念はほぼ杞憂に終わった。21年11月、連邦政府のコロナ下の職業訓練特別対策本部の閉鎖に際して発行された報告書他のサイトへで「コロナ期間を通して全般的に、VETは危機に強いということが証明された」と結論付けた。

職業訓練に関する共同研究プロジェクト、職業訓練パルス他のサイトへはパンデミックが職業訓練生に及ぼす影響を観察してきたが、若年層は在宅勤務(職業訓練の初期には理想的ではない)と自宅待機の要請に強く影響を受ける時がある、という研究結果を発表している。

職業訓練制度の欠点

コロナ禍前にも職業訓練制度には課題があった。早すぎる時期に職業選択を迫られると感じる親や生徒もいる。14歳でどうやって人生で何をしたいか分かるというのか、と疑問を呈する。しかし専門家は早い時期に職業訓練を受けることは貴重な人生経験となる上、後で進路を変更するという選択肢も常にある、と話す。

特に在スイス外国人や専門職の間では、世間体のために子供に大学進学コースに行くようプレッシャーをかけるところもある。しかし現在、大学に進学する生徒は約25%しかいない。

それでもスイス当局の職業訓練制度に対する信頼は変わることがなく、定期的にその利点を外国で宣伝している。若者が技能を競い合う「技能五輪国際大会他のサイトへ」はその良い機会だ。この大会でスイスはいつも好成績を収めている。(2021年大会はコロナパンデミックのため中止され、22年9~11月に日本など15カ国で代替大会が開催された)

国際的な評価も高い。よく言われる「黄金基準」の称号は2015年にハーバード大学主体の職業教育制度の国際比較研究でスイスが1位に認定されたことに由来する。

興味を示す米国

米国は特にスイス方式を学ぶことに積極的だ。21年11月に当時スイス大統領だったパルムラン氏は自らワシントンを訪れ、職業教育・訓練に関する2国間協力の覚書を更新他のサイトへした。

2015年に始まった2国間協力に基づいて、米国の代表団が職業訓練について更に学ぶためにスイスを訪れてきた。また、スイスモデルと同様の教育、職業訓練制度を推進する取り組みを開始した州もある。米国に拠点を持つスイス企業も宣伝に努めている。

スイスの特性

また、連邦統計局の最新のデータで明らかになったのは、職業訓練からスタートした人の多くが高等教育に進むということだ。中でも上級の連邦資格の学校や高等専門学校に進む人が多いのがスイスの特徴だ。特に看護やIT分野で制度が整っていて知識やマネジメント能力を向上できる。

職業訓練を修了し、職業マチュラ/マチュリテを取得すれば応用科学大学に進学できる。応用科学大学とはスイスの実学志向の大学のことだ。更に追加試験(Passerelle)を受ければ学術大学にも入学する道が開ける。

しかし連邦上級資格や高等専門学校の学位は、国外では認知されないことが多い。特に大学卒業者の割合が多い国では認められない傾向にある。この問題にどのように対処すべきか現在議論されている。

英語からの翻訳・谷川絵理花

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