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ロシアからのガスなしに欧州は冬を超えられるのか

ガスナットのルネ・バウツ社長。スイス西部ヴォー州コソネにある同社の減圧ステーションにて Gaznat

米国がロシア産化石燃料の禁輸を決め、欧州も依存度を下げる方針だ。スイスでガスナット社長並びにグローバル・ガス・センター会長を務めるルネ・バウツ氏は、欧州とスイスが抱えるエネルギー政策の問題を指摘する。

このコンテンツは 2022/03/23 02:00
Olivier Grivat

swissinfo.ch:スイスではガス料金が昨夏比で12倍に跳ね上がりました。これだけ急激な値上がりを経験したことはありますか?

ルネ・バウツ:これはかつてない記録的な出来事です。これまで1メガワット時(MWh)当たり平均30ユーロ(約4千円)前後だった価格が、今は345ユーロにまで跳ね上がりました。とはいえ、欧州にはまだ十分なガスがあり、貯蔵施設は3割満たされています。また、ロシア産ガスは現在も1日2億5千万立方メートル供給されています。

価格上昇の理由は主に心理的なものです。今は寒さも落ち着き、春になれば暖かくなるにもかかわらず、価格が上昇しています。今夏までは価格が大きく上昇しますが、来冬にはまた下がると予測しています。

ガスナット

有限会社ガスナットは、スイス西部における高圧ガスの供給・輸送を担う。ジュネーブ拠点のグローバル・ガス・センター(GGC)は、ベストプラクティスの共有を求める天然ガス会社の経営者や専門家を支援する非営利団体。

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swissinfo.ch:市場価格の上昇にはどう対処すべきですか?

バウツ:ガス会社は今春以降、フランスやイタリア、ベルギー、ドイツなどにある地下貯蔵庫をいち早く充填するよう務めるでしょう。欧州最大の貯蔵庫は、地下に隠れた設備にあります。

ガスナットがフランスで確保した埋蔵量は、来冬、数十日間であれば部分的に自給自足できる程度の量です。冬期の消費量は夏期の5〜6倍あり、今以上にストレージに投資する必要があります。

スイスでは、特にヴァレー(ヴァリス)州東部のオーバーヴァリスとグリムゼル岩塊にある地下空洞のプロジェクトが再開される予定です。4億フラン(約500億円)の巨大プロジェクトです。

しかし欧州主要国は、ガスだけでなく発電もロシア産の石炭に依存しています。つまりロシアからのエネルギー供給全体が問題なのです。

swissinfo.ch:米国はロシアからの化石燃料の輸入禁止を発表しました。欧州連合(EU)も依存を減らしていく方針です。しかし欧州はロシア産のガスなしで本当に大丈夫でしょうか?

バウツ:米国がガス輸出国である一方で、欧州は輸入するガスの4割がロシア産です。昨年ガスナットがスイス西部で供給したガスの推定約25%はロシア産でした。

ドイツ語圏のスイスではロシア産の割合が更に高くなっています。もしロシア産が完全に断たれたら、今夏中に貯蔵設備を満たすのは難しいでしょう。新たに長期契約を結び、欧州で液化ガスに大規模な投資をする必要がありますが、それには3〜4年必要です。

スイス政府は、供給の安定性を再検討するようスイスガス産業協会(VSG)に要請しました。今、エネルギー政策にターニングポイントが訪れています。その前後で大きな変化があるでしょう。

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swissinfo.ch:供給を確保できる他のルートはありますか?

バウツ:北アフリカ、東はカスピ海、そして北海にはノルウェーからデンマークを経由してポーランドを結ぶ「バルチック・パイプ」が建設中です。またエジプトでは地中海で発見されたガス田の開発が進んでいます。

液化天然ガス(LNG)の輸入を増やすことも考えられますが、そのためにはガスをマイナス163度で液化して体積を減らし、到着後に再加熱できるターミナル港が必要です。ガス輸入の49%をロシアに頼るドイツには、そのようなターミナルはありません。

swissinfo.ch:スイスの消費者物価への影響は?

バウツ:それは各ガス供給会社が値上げにどう対処するかにより異なります。ガス料金にはガス自体の価格の他にも、輸送費、税金(高騰した石油税と炭素税)、付加価値税(VAT)が含まれ、税金が約3割です。

解決策として、付加価値税(7.7%)を一時的に引き下げ、他にも課税を幾つか削減することが考えられます。最も憂慮されるのは、支払いが困難になる消費者が増えることです。

スイスにはまだ影響が出ていませんが、欧州では既に1億人の消費者がこういった状況に置かれています。石油やガス、電気の全てが同時に高くなったのですから。今秋どうなるか、先行きは全く不透明です。

マイナス163度に冷却された液化天然ガス(LNG)を輸送するタンカー Gaznat

swissinfo.ch:ガス供給会社は価格上昇から利益を得ていますか?

バウツ:ガス供給会社の大半は、自治体の公益事業が管理しています。それぞれ独自の価格政策をとっていますが、ガスが値上がりすると、通常その一部は消費者にしわ寄せがいきます。

ある一定の価格水準を超えると、需要が減ることも考えられます。消費者は省エネに努め、家の断熱性を高め、あるいは代替エネルギーに切り替えるでしょう。しかしこれにはリスクもあり、特に広範囲で連鎖的に停電する「ブラックアウト」は危険です。

swissinfo.ch:ガスの供給問題がスイス政府の重要項目として浮上してきました。

バウツ:政府はピーク電源用にガス火力発電所3カ所の建設を検討しており、スイス西部の8カ所が候補地に上がっています。最終的にはスイスのフランス語圏とドイツ語圏にそれぞれ対応する発電所プロジェクトが2~3件選ばれるでしょう。

その際、既存の工業地帯のガスパイプラインや開閉所の近くに配置するのが理想的です。(編集部注釈:これによりヴァレー州シャブレー地区のシャヴァロン火力発電所が再稼働する可能性が浮上した)また、行政手続きの期間が総じて長くなってきているため、これらも簡素化する必要があります。

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swissinfo.ch2050年までに脱化石燃料化する政府の目標は、まだ達成可能ですか?

バウツ:ガスについては、再三達成が危ぶまれてはいますが、最終的な判断はまだ下されていません。長期的には化石燃料を段階的に廃止し、再生可能エネルギーや植物由来のバイオマスを拡大する必要があります。後者は、スイスにもまだ開発の余地があると言えるでしょう。

全てを電化することは無理ですし、コストがかかり過ぎます。数種類のエネルギーを組み合わせたエネルギーミックスに頼る方が良いでしょう。それには時間と十分なリソースが必要です。また、水力発電や太陽光発電、風力発電、そして合成ガスやバイオガスなど、スイスが自給できるシェアを高めていく積極的な政策も重要です。

(独語からの翻訳・シュミット一恵)

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