スキー場で事故多発 スイス、パトロール実施検討へ
楽しかったはずのスキー旅行が暗転して病院行き——。
スイスでは、こんな事態に陥る人が毎年11万人にのぼる。特に、スノーボードが流行りだした90年を境に事故の発生件数が急増、けがの程度も頭の骨を折るなど重傷の場合が多いという。
記録的な大雪に見舞われている欧州では、3月現在でもスキー場には雪がたっぷり。こうした事故多発を背景に、関係者の間では、ヘルメット着用を呼びかけたり、スキー場にパトロールの実施を義務づける法案を求めたりなど、安全対策を強める動きが広がっている。
日常茶飯事
スイス中部インターラーケンの病院に、航空救助隊レガ(Rega)のヘリコプターが着陸する。担架に乗せられた女性の顔は大量の血で覆われている。レガの隊員が急いで集中治療室まで運ぶ。
「この女性は滑走中に他のスキーヤーと衝突して、顔面を強く打ったんだ」とパウル・ギュンター医師は話す。「本人の説明では、ぶつかってきた相手はかなりのスピードを出していて、彼女は気付かなかったと言うんだ」。
こうして運ばれるけが人が日に20人を超えることも珍しくないという。「スキーシーズンが本番を迎えるだろう?そうすると医者も忙しくなるわけさ」とギュンター医師は苦笑する。
安全策巡る動き
スイス事故防止協会によると、スキー場での事故はスキーやスノーボードの接触事故よりも、スピードの出しすぎによる「自爆」が大半で、10人中9人は後者にあてはまる。
さらに、頭部外傷がけが全体の1割を占め、その程度も重い。航空救助隊レガに連絡してヘリで病院に搬送しても、悪天候の場合には時間がかかることも考えられるため、同協会は頭を保護するヘルメットを着用するよう呼びかけている。
社会民主党議員でもあるギュンター医師も現在、スキー場にパトロールの実施を義務づける法案を今春の国会に提出する予定。「航空救助隊レガも賛成している」と可決に自信を見せる。
だが、スキー場の経営者側からはコスト負担が増えるだけと消極的な意見も聞かれている。
swissinfo デイル・ベヒテル 安達聡子(あだちさとこ)意訳
補足情報
航空救助隊レガ:
スイスの非営利組織で航空救助サービスを提供。
活動資金は、約160万人の会員からの寄付と保険会社からの支払いでまかなわれる。
ヴァレー州を除き、15分以内にヘリを派遣することができる。

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