スイス・ユダヤ人団体、「ホロコースト搾取」説を批判
スイスのユダヤ人団体は、昨日刊行された米歴史家の新著の、米国のユダヤ人団体がホロコーストを悪用してドイツやスイスの企業を恐喝しているという説を強く非難した。
スイスのユダヤ人団体は、昨日刊行された米歴史家の新著の、米国のユダヤ人団体がホロコーストを悪用してドイツやスイスの企業を恐喝しているという説を強く非難した。
ノルマン・フィンケルシュタイン氏の新著「The Holocaust Industry」は、米国のユダヤ人協会は、ナチのユダヤ人虐殺の史実をゆがめ、スイスやドイツの企業をゆするために悪用したという説を展開した。そして「ユダヤ人組織が欧州企業から和解金を取った事は詐欺行為だ。本当の迫害の生存者らの手には、1セントも入っていない。」と暴露した。
フィンケルシュタイン氏の著作に対し、スイスのユダヤ人協会連合の副会長であるトーマス・リジー氏は、スイス銀行に対する補償金請求の件に関しては、著者は完全に解釈を誤っていると、swissinfoに語った。「スイスが被害者であるわけがない。長い、困難な議論があったのは事実だが、フィンケルシュタイン氏の言うような脅迫のような事実はない。」
フィンケルシュタイン氏は、補償金を望んでいるのはホロコースト生存者だけでなく、米国のユダヤ人団体も金に執着している。スイスの銀行は、すでに和解金の半額にあたる6億ドルを米国の銀行口座に入金した。が、アメリカのユダヤ人団体は、全生存者が死亡するのを辛抱強く待って、和解金を全て自分達の手に入れようとしていると主張する。
フィンケルシュタイン氏の著作の動機の一つは、「ホロコースト産業が今日の世界の反ユダヤ主義の扇動者だという事を示したかった。和解金を強奪するやり方は、欧州に反ユダヤ主義を扇動しているのだ。」とswissinfoに語った。
「The Holocaust Industry」で批判の的となっている説の一つに、ホロコーストは特殊な事件ではなく、スターリン、ポル・ポト、ベルギーのコンゴ占領と同じ脈絡で捉えるべきだとの主張がある。そして「ナチ・ホロコーストの異常さは、史実その物から起こったのでは無く、周辺から派生した史実を悪用して搾取する産業『ホロコースト産業』から起こったことだ。」との論説を展開している点だ。
リジー氏は「多くの人は、ホロコーストは人類史上特別な悲劇だという事に同意している。フィンケルシュタイン氏は、現在では反ユダヤ主義者かホロコーストの事実を認めようとしない人々が唱えるような議論を取り上げた。」と論駁する。

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