スイスも全面禁煙まであと少し
ジュネーブで提出された「全国の公の場で全面禁煙を求めるイニシアチブ」が、連邦レベルの討議に入った。
このイニシアチブが通れば、職場、レストラン、バー、映画館、ショッピング・センターなどが全国レベルで禁煙になる。
禁煙法は、今後ローザンヌにある連邦法廷での承認を待って、国民投票にかけられる見込みだ。具体的な日程はまだ明らかではないが、世論調査を見ると禁煙に賛成の人が多く、スイスでも隣国のイタリアに続き、全面禁煙は時間の問題となりそうだ。
受動的な喫煙も健康に害
国民投票にかけられれば、法案が通る可能性は高い。各州政府は、公の場所で全面禁煙となった場合、喫煙ゾーンをどこに設けるかなど、法案可決後の対策について準備を始めなくてはいけないようだ。9月8日、連邦議会の健康諮問委員会はこのイニシアチブをよりさらに検討するために関係機関に送った。
タバコは喫煙者だけが健康を害するわけではない。周りに喫煙者がいれば、受動的にタバコの煙を吸わされる人も間接的に喫煙することになる。この間接喫煙が問題となり、今回の法律改正の動きにつながった。諮問委員会が目指しているのは、一般的に間接喫煙から人々を守ることと、特に職場での喫煙を禁止することである。
このイニシアチブは、医者でもあるフェリックス・グツヴィラー議員によって議会に提出された。グツヴィラー議員によると喫煙者でない人も、長期にわたってタバコの煙を吸い込むことで、身体を壊す人が大勢いる。スイスではこのために毎日1人が亡くなっているほか、何千人もの人が病気になっている。
この状況を改善するため、同議員は間接喫煙を予防する方法を雇用法に盛り込むことを要求している。
政府によると、間接喫煙による経済的損失は推定で年間5億フラン ( 465億円 )。間接喫煙に反対する団体、「プロ・アエラ ( Pro aera )」が最近行った調査によると、10人のうち8人がグツヴィラー議員が提出した法案を支持している。
すでに全面禁煙に踏み切っている州も
全国に先駆け、スイス南部のイタリア語圏ティチーノ州ではすでに州内の公共の場所を禁煙にしている。隣国イタリアではすでに全面禁煙に踏み切っているという事情もあり、ティチーノ州の住民投票では79.1%と大きな差をつけて禁煙を支持した。
ティチーノ州では、レストラン、バー、ディスコやナイトクラブでも喫煙が禁止されている。このような施設のオーナーは、喫煙ゾーンを設けることはできるが、その際には換気を完璧にしなければならない。この禁煙法は今年3月に発効したが、オーナーが法律に合うよう施設を改築するまで1年の猶予期間が与えられている。
全面禁煙に踏み切ったティチーノ州住民投票の結果は、事前に行われた世論調査で充分予測できた。世論調査では80%以上が禁煙を支持していた。
禁煙についてこのように厳しい態度を取る州は今後も増えると見られている。フリブール/フリブルク、ヌーシャテル、ジュラ、チューリヒ、アールガウ、ザンクトガレン、ソロトゥルンなどでこの動きがある。
18歳以下の若者にタバコを売ることを禁止する法律を、最初に設けたのはヴォー州である。現在、バーゼル、ベルン、グラウビュンデン、ルツェルン、ツーク、チューリヒなどが法律改正の手続きを行っている。
スイス連邦鉄道は、去年12月12日から全面禁煙となっている。
swissinfo、外電 遊佐弘美 ( ゆさ ひろみ )
補足情報
-世論調査によると、64%が「パブは禁煙にするべきだ」と考えている。
-67%が「タバコの広告をより厳しく規制するべきだ」と考えている。
-90%が「若者にタバコを売るのは違法とするべきだ」と考えている。
-非喫煙者が職場で間接喫煙を受けないこと定める法律は1992年に発効した。
-今年3月、ティチーノ州では、公共の建物における全面禁煙に踏み切っている。
-スイス連邦鉄道では、去年の12月12日から、すでに全面禁煙になっている。
-ヴォー州は、スイスで最初に18歳以下の若者にタバコを売ることを禁止した。
キーワード
スイスの人口740万人のうち、喫煙者は約200万人。
スイスは欧州の中でも最もタバコを消費する国の1つ。平均的な喫煙者は1日20本のタバコを吸う。
連邦保険局によると、毎年約8000人が喫煙に関係した病気で死亡する。

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