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アートバーゼルはただのアートフェアじゃない

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このコンテンツは 2018/06/13 15:30
「バーセルのムーブメントにおける裸の真実」というモットーのもと、裸で展示会場を歩く活動家たち、1989年6月20日のアートバーゼルで Keystone

世界最大の国際アートフェア「アートバーゼル(Art Basel)」が14日、バーゼル市内で始まる。世界中から美術商やバイヤー、コレクターが集まる美術品のマーケットだが、それ以外の多彩なイベントも大きな魅力だ。

第1回のアートバーゼルは1970年にさかのぼる。複数のギャラリストの独創的なアイデアで生まれたアートバーゼルは、拡大を続けるアートの世界(とその市場)で活動していた様々な層のアーティスト、ギャラリストが参加できる、当時としては珍しい「開かれたフェア」だった。

フェアは瞬く間に成功を収めた。出展ブースの数は増え続け、76年には最大受け入れ数の300件に到達。今日までその人気は衰えていない。今年は291件のギャラリーが出展。昨年は9万5千人の来場者がアートを求め、約2万7千500平方メートルの広大な出展スペースを歩き回った。

アートバーゼルが美術市場のハブとして確固たる地位を確立させていくのに並行して、スイス各地では若手アーティストやパフォーマー、ギャラリーにスポットを当てた取り組みが広がった。そのセカンド・アートフェアの一つ「LISTE」は若手ギャラリスト10人が1995年に設立し、古い工業地区「Werkraum Warteck」でフェアを行った。このギャラリストたちの中にはチューリヒで有名になったペーター・キルヒマンやエバ・プレゼンフーバーらがいる。設立から2年後の97年には地元のプライベートバンク「E.Gutzwiller&Cie」と提携した。

古いビール製造所は新しい文化スペースに姿を変え、バーゼル市民に親しまれている。1996年からLISTE会場になった Daniel Spehr/LISTE

熱狂的なアートファンらから定評を得たLISTEに続き、05年にはフリーのディーラー数人が、新しい国際的なセカンド・アートフェア「VOLTA」を設立。創設者らは同フェアの趣旨を「若いアートを中心としたLISTEと、巨大アート市場のアートバーゼルを越えた、国際的なギャラリストのための交流・活動の場を確実に提供する」と説明する。

また、アートバーゼルの会場からトラムで数分の場所にあるバーゼル市立美術館は、アートバーゼルとは対照的な非商業的アートを堪能できる。ここにはアートバーゼルにない魅力がたくさん詰まっている。

さまざまな特別プログラム

アートバーゼルには巨大サイズの彫刻作品や映像作品、ライブパフォーマンス、絵画を展示するためのスペース「Unlimited」がある。監修はニューヨークにあるスイス現代アート研究所の前所長、ジアンニ・イェツァー氏だ。

巨大サイズのアート作品の展示に用意された、無制限に広がるスペース「Unlimited」 Courtesy Art Basel

規模が大きくなり、売上高が増えるにつれ、アートバーゼルは巨大で開かれたアート市場と捉えられるようになった。同時に、その圧倒的な規模ゆえに、アーティストと一般来場者の意見の交換や、作品への反応を知るといった交流の機会はほぼ皆無に等しいとも言えた。開かれたアートフェアであるはずのアートバーゼルにとって、トレンドセッターなどの「選ばれたグループ」だけが尊重されるようになるのは、もちろん好ましくないことだ。

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そのためアートバーゼルには、ギャラリーの出展ブースのほかにも、特別なプログラムを用意している。パネル討論会「Conversations」ではアーティストやコレクター、キュレーターが自由に意見交換。「Feature」はギャラリー関係者が歴史的に重要なアーティストに焦点を当てる。また「Statements」は大手保険会社が若手対象のバロワーズ賞を設け、受賞作品を買い取って欧州圏内の美術館などに寄贈する。

ドイツ人アーティストThomas Struth作「Animals」は「Parcours」で展示されている Courtesy Art Basel

「Parcours」はバーゼル市内で彫刻作品の展示やパフォーマンスを催し、「Edition」は出版社やアーティストの書籍や版画の中でも稀少価値を持つ作品を展示。ほかにも実験的な映画作品を楽しむプログラムもある。

もちろん作品の全てには、しっかりと値札が貼られる。古き一流のアートフェアという役割は忘れていない。

ルイーズ・ブルジョワ作「Ode à l'Oubli」。コラージュとリトグラフで構成されたこの作品はコピーが25点しかないため、希少価値が高い。アートバーゼル「Edition」で展示されている Courtesy Art Basel


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