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サッカーW杯 南ア大会のスタジアムを後にして

ケープタウンスタジアムは、リューク氏が手掛けた南アのスタジアムの一つ Keystone

サッカーW杯南アフリカ大会が行われる「ケープタウンスタジアム」など、3カ所のスタジアムの建設現場監督は、スイスの女性建築家が務めた。

このコンテンツは 2010/06/12 15:25

ミッシェル・リューク氏は、ドイツのハンブルクの建築事務所「ジーエムピー ( gmp ) 」が請け負ったスタジアムのインフラ工事を3年間手掛け「これは実践面でもまた文化面でも、大きなチャレンジになった」と語る。

初めての衝撃

連邦工科大学チューリヒ校 ( ETHZ/EPFZ ) で建築を学び、その後バーバート大学で建築史、建築理論の修士号を取得したリューク氏にとって、南アでの仕事は、「キャリア上での初めての衝撃」だった。

ジーエムピーは、ポート・エリザベス ( Port Elizabeth ) のネルソン・マンデラ・ベイスタジアムの建設を2005年に受注した後、1年後にダーバンとケープタウンのスタジアム建設も請け負うことになった。

リューク氏が2006年にジーエムピーのケープタウン事務所の所長として赴任した当時、準備期間の仕事は終了していた。しかし2週間後すぐにスタジアム建設に取り掛かかれるよう事務所のインフラを整備する必要があった。

「ドイツから送られるプランをこなし、現地の建設パートナーにプランを十分に理解してもらうことはできました。でも、ドイツからのプランはプロジェクトの進行に関する指示のみで、南アでの生活や仕事環境への配慮は一切なかったのです」
とリューク氏は当時を振り返る。こうしたことは後でたっぷりと学ぶことになる。

全員の意見一致社会

新しい環境に馴染むというプレッシャーに加え、家庭でも電話やコンピューターをどこで入手するかといった細かい問題があった。一方リューク氏は、より直接的なコミュニケーションの方法を南アで学んだ。
「無数の関係者と無数のミーティングを持ち、しかも重要な議論を戦わせる必要がありました。しかしオーガナイズがうまくいっていないため、細かなことでも聞き逃さないよう注意しなくてはなりませんでした」
と話す。

南アの「参加者全員の意見一致社会」と彼女が呼ぶところのものは、「全員に意見を聞き、一人ひとりが解決のための意見を述べるもの」だった。これはプランの進行を遅らせる大きな障害物だった。

「スタジアムという巨大な建設現場では色々なことが起こるのは当然。しかし大切なことはスタジアムの最終的なビジョンを見失ってはならないということです」
とリューク氏。

次の大きな問題は南アでの出産だった。
「しかし育児と仕事との両立は、南アだからというのではなく、世界中どこにいても起こる問題です」
と言う。

サッカーで一体

南アの文化を好きになり始めたころ、安全性を確保するために、安全管理を強化する必要に迫られた。南アは世界で犯罪率が最も高い国の一つだ。
「南アではドイツやスイスより、もっと気をつけて通りを歩かなくてはなりません。ある時間帯では、とにかく1人で街を歩けないのです」

また、南アではスポーツの好みに人種的壁があることにも気が付いた。
「黒人は本当にサッカーが好き。ところが初めのうち、白人はサッカーを無視してラグビーやクリケットだけに熱中していました」

ところがW杯が近づくにつれ、社会全体がサッカーのファンになっていった。「サッカーが素晴らしいのは、人々を一体にさせるところだ」とリューク氏は思う。

「われわれの建てたケープタウンスタジアムでW杯の第一回戦、フランス対ウルグアイ戦が行われるのです」
とリューク氏は興奮気味に言う。しかし、スタジアムのオープンは彼女の仕事の終わりを意味する。実際、今年2月からリューク氏は2014年のW杯ブラジル大会のために、リオデジャネイロで仕事を始めた。

サンドラ・クリツェリ、swissinfo.ch
( 英語からの翻訳、里信邦子 )

ミッシェル・リューク氏略歴 ( Michele Rüegg )

1970年チューリヒで生まれる。
連邦工科大学チューリヒ校 ( ETHZ/EPFZ ) で建築を学び、1998年卒業後、バーバート大学で建築史、建築理論の修士号取得。
2006年11月から12月にかけ、南アケープタウンの「ジーエムピー ( gmp) 」オフイスの所長及び現場監督を務めた。
2010年2月、2014年のサッカーW杯の開催地、ブラジルのリオデジャネイロに移動。ジーエムピーはここで四つの建築プロジェクトを請け負っている。

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W杯でのスイスの対戦

6月16日、ダーバンでスペインと対戦。6月21日、ポート・エリザベスでチリと対戦。6月25日、ブルームフォンテーンでホンデュラスと対戦

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